マイコプラズマ・ニューモニア(肺炎マイコプラズマ)という細菌に感染することで、風邪や気管支炎、肺炎などを起こします。肺炎の原因の10~20%程度がマイコプラズマであるといわれており、とてもありふれた感染症です。
潜伏期間は2〜3週間と長く、発症した人の咳やくしゃみのしぶきを吸い込んだり(飛沫感染)、しぶきのついた手で鼻や口を触ったりする(接触感染)ことで感染します。感染力は通常の風邪やインフルエンザほど強くはなく、保育園・幼稚園や学校などで感染が広がることはそれほど多くはありません。ただ、家庭内で感染することは多く、接触する機会の多い幼い子どもと母親が共に感染するケースがよくみられます。
発熱、全身倦怠感、頭痛などの全身症状が現れてから少し遅れて乾いた咳が出始めます。咳は徐々に強くなり、夜間、早朝にでやすくなります。乾いた咳から湿った咳に変わっていき、熱が下がった後も約3~4週間、咳は続きます。
乳幼児から老人まで広く感染するマイコプラズマですが、乳児や老人では風邪程度で軽くすむことが多い一方で、幼児から青年にかけての本来免疫力の強い世代で気管支炎や肺炎に至ることが多いのが特徴です。
その他に、声のかすれ、耳痛、のどの痛み、吐き気や腹痛などの消化器症状、胸の痛み、皮疹、喘鳴など、多彩な症状が出現し得ることがマイコプラズマ感染症の特徴です。
熱が下がって軽快したと考えられた後にも痰にはマイコプラズマ菌が排出され続けます。排出される菌量は症状が最も強かった時期をピークに1週間ほど高いレベルで続き、その後も4~6週間以上排出されるため、ヒトへの感染には注意が必要です。
マイコプラズマ感染症の特徴の一つに、「免疫力が強い人のほうが症状はひどくなる」というものがあります。実は、マイコプラズマ自身は強い毒素を出しません。そのままそこにいて悪さをしないこともあります。しかし、人の免疫機構はマイコプラズマを異物と認識します。そのため、マイコプラズマが体内に侵入すると免疫系が反応し、マイコプラズマを排除しようと自己免疫機序が強く働くことで、二次的に肺や気管支を傷つけてしまい「肺炎」を発症するのです。
マイコプラズマに感染しても免疫機構が弱い乳幼児や老人の場合はほとんど肺炎になりません。
家庭内でマイコプラズマが流行っている状況の中で、「兄は肺炎、妹は風邪」というパターンもよく見られます。年齢がある程度高く(4~5歳より上)ならなければ、ほとんど肺炎にはないためです。
気管支炎や肺炎など呼吸器疾患として知られるマイコプラズマ感染症ですが、合併症は様々です。これら多彩な合併症もまた、マイコプラズマに対する自己免疫機序により発症すると考えられています。
起こり得る合併症 ●中耳炎 ● 無菌性髄膜炎 ●脳炎 ●肝炎 ●膵炎 ●溶血性貧血 ●心筋炎 ●関節炎 ●ギラン・バレー症候群 ●スティーブンス・ジョンソン症候群 など |
他の細菌感染に使用する抗菌薬は効きません。マイコプラズマに効果のある抗菌薬(マクロライド系抗菌薬)を使いますが、マクロライド系抗菌薬は、あまり味が良くなく(苦味がある)、なかなか飲めない子も多くみられます。この場合には、比較的味の濃いアイスクリームやコンデンスミルク、ケーキシロップなどに混ぜると飲みやすくなります。ヨーグルトに混ぜると苦みが出て逆効果です。酸っぱいものには合わないようです。
病原体 |
肺炎マイコプラズマ |
感染経路 |
飛沫感染・接触感染 |
潜伏期間 |
2~3週間 |
周囲に感染させうる期間 |
臨床症状発現時がピークで、その後4~6週間続く |
登園・登校基準 |
発熱や激しい咳が治まっていること(症状が改善し全身状態が良いこと) |