チック

症状

チック,子ども

チックとは、突発的で、不規則な、体の一部の速い動きや発声を繰り返す症状で、不随意運動とよばれる症状の一種です。緊張すると増える傾向があります。

症状の始まりは、幼稚園~小学生低学年頃からが多く、一時的に出現して2~3カ月で消えていく場合や、軽くなったり重くなったりして何年か続く場合があります。多くは中学生までのうちに消えていきます。

男女比は3:1で男子に多く、一時的に出現する軽い症状も含めると子どもの10~24%で見られるという統計もあり、決して珍しい症状ではありません。

チックには様々な形があり、大きく運動性チックと音声チックに分かれ、それぞれが単純性、複雑性に分類されます。瞬き、首振り、顔しかめなどの単純性運動性チック、物に触る、物を蹴る、飛び上がるなどは複雑性運動性チックです。また、発声、咳払い、鼻鳴らしなど単純性音声チックと、汚言、反響言語(人の言葉を繰返す)などの複雑性音声チックもあります。一見、乱暴な行動や非常識な言動、爪噛み、口や目、髪の毛をずっと触っているなどもチックのことがあります。

チックの種類

単純/複雑

症状

備考

音声チック

単純

咳払い

しばしば横隔膜や中咽頭筋の収縮によって引き起こされる

鼻鳴らし

うなり

複雑

同語反復

自分自身の音声や言葉の繰り返し

同響言語

最後に聞いた言葉や音節の繰り返し

苦言

わいせつな言葉、民族的・人種的、

宗教的中傷など

運動チック

単純

まばたき

 

肩すくめ

四肢の伸展

複雑

汚行

性的または卑猥な身振り

同響動作

誰かほかの人の運動のまね、合目的にみえる可能性あり

診断

チックがある場合は、外来でもその様子をみられることが多く、ほとんどは症状を観察することで診断をつけられます。「チック」が4週間以上持続するものを「チック症」といいます。

チック症は次のように分類されます。

病型

症状

暫定的チック

運動チックまたは音声チックがみられるが、持続期間が1年以内の場合

持続性運動または音声チック

運動チックまたは音声チックの一方だけが1年以上みられる場合

トゥレット症候群

運動チックと音声チックの両方が1年以上みられる場合

原因(ちょっと難しいはなし)

大脳,チック

チックは精神的な病気と思われがちですが、本質的にはチックを起こしやすい大脳の特性を持った人に、心理的なストレスなどが引き金となって出現すると考えられます。具体的には、大脳基底核という部分(図の青い部分)が関係していると考えられています。大脳基底核は、神経系の色々な部分から入ってきた情報を調節して、体の動きをスムーズで滑らかにする働きをします。そこで使われる化学物質(ドーパミン)の受け取り手(受容体)が、過敏に反応しすぎると、チック症状が起こります。また大脳基底核に情報を送る、大脳皮質や大脳辺縁系という部分も関係していると考えられていますが、細かいことはまだわかっていません。

治療

治療は心理的ストレスがはっきりとしている場合はそれを取り除きます。単純な動作のチックでは1年以内に消失することが多いので、チックをやめるように言ったりしないこと、きつくしからないようにすることで大半は治ります。治療が必要となるチックは、その症状により社会生活上、著しい制限が生じる場合です(すなわち、チックで本人が困る場合)。カウンセリングや薬物(漢方や安定剤)が必要になることもあります。逆に生活に支障を来たさないチック(家族が気にしているだけ)は治療の対象にはなりません。まずは慌てずに対応し、改善できるところは改善し、慢性、難治なケースになれば、薬物治療を考えることになります。