臍ヘルニアとは、いわゆる「でべそ」のことです。
赤ちゃんは、お母さんのお腹の中ではへその緒を介してお母さんの胎盤とつながっており、酸素や栄養をもらっていました。
へその緒の正体はお母さんと赤ちゃんをつなぐ血管です。
赤ちゃんのお腹の筋肉には穴が開いており、お母さんの胎盤からの血管(へその緒)はその穴を通って赤ちゃんのお腹の血管とつながっています。筋肉の穴が閉じると赤ちゃんは生きられないので、在胎中は絶対に閉じません。
しかし、生まれた後はへその緒が切り離され、へその緒の血管は不要になります。そして筋肉の穴は自然に閉じていき、おへそはへこんでいくのですが、閉じるのが遅れると、この穴から腹圧によって繰り返し腸がとび出すようになります。この状態が「臍ヘルニア」です。ちなみに「ヘルニア」とは「とびだす」という意味です。
典型的には、生後2~4週くらいでおへそがだんだん膨らんできて、生後3か月頃まで大きくなります。一番大きくなるとピンポン玉くらいになることもあります。泣いたりいきんだりして腹圧がかかると、筋肉の穴から腸が飛び出しておへそが膨らみます。触るとグジュグジュした感触で簡単にお腹に戻せますが、泣いて腹圧がかかるとすぐに出てきます。生後4~5か月以降はだんだん小さくなっていきます。そして1才ぐらいまでには自然に閉じることがほとんどです。
臍ヘルニアの自然経過を見ていると、おへそが大きく膨らんだ結果、その部分の皮膚が伸びてしまい、おへその穴が閉じた後は伸びた皮膚がたるんで、おへその格好が悪く見えてしまうことがあります。そうならないためによく行われている処置が、臍ヘルニアの圧迫療法です。とび出た腸を中に戻して、おへそを綿球かスポンジで圧迫し、かぶれにくい防水フィルムで固定します。そのままお風呂も入れるし、はがれるまでそのままにして、はがれてきたら新しいテープに張り替えます。おへその皮膚が伸びないだけでなく、腸管の脱出を防ぐため、筋肉の穴が早く閉じることが期待できます。