IgA血管炎は、「血管性紫斑病」や「アレルギー性紫斑病」とも呼ばれ、皮膚症状(足からら始まる発疹、出血斑)、腹部症状(腹痛)、関節症状(関節痛)の3つの症状を特徴とする原因不明の疾患です。多くは、風邪をひいた後などに発症し、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)という菌が関与する例も見られます。好発年齢は2~8歳で、やや男の子に多くみられます。3つの症状のうち、皮膚症状は必ずみられます。
通常は足からお尻を中心に左右対称にややもりあがる赤みのある発疹で始まり、しだいに出血班(細かな皮下出血)に変化して、数日で消えていきます。お腹の症状は50~70%でみられ、強い腹痛に嘔吐や下血を伴うこともあります。関節症状は50~60%で、足や膝の関節の痛みや腫れが多く、通常は数日で改善します。最初の外来受診パターンとして、足の発疹でまず皮膚科を受診して塗り薬で良くならないため小児科を受診されるケース、初めは腹痛だけでしばらくしてから発疹が出現するケースなどがよくあります。原因不明の腹痛の中には一定数この病気が隠れていますので、小児科医は、腹痛の子どもをみると足に発疹がないかを見る癖がついています。多くは2ヵ月以内に自然に治っていきますが、長期間にわたって皮膚症状を繰り返す場合もまれにみられます。
経過中に25~50%の例で、紫斑病性腎炎という腎臓の病気を合併します。この場合も、軽度の血尿ですむ場合から重い腎炎になる場合まで様々ありますが、ほとんどは数か月のうちに治っていきます。
自然に治っていく病気であり、無治療または対症療法(症状を緩和させる治療)が基本となります。病気が始まってからしばらくの間は安静が大事です。関節の痛みに対しては、痛み止めの薬を使います。お腹の症状が強い場合には入院治療になり、絶食で点滴を行います。腹痛の程度により、ステロイド剤を使用します。治った後しばらくは、尿検査で蛋白尿や血尿が出ないかの確認をします。