難聴

耳の構造と聞こえの仕組み

耳の構造

耳は大きく 3 つの部分に分けられます。

 

① 外耳(耳介、外耳道)

音波は、空気の振動として耳介から拾い集められ、外耳道を通って鼓膜にあたります。

② 中耳(鼓膜、耳小骨)

鼓膜から中耳内の 3 つの耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)を伝わることで、音波の振動が増幅されていきます。

③ 内耳(蝸牛、聴神経)

増幅されて内耳のリンパ液に伝わった音波は、蝸牛によって神経や脳細胞が受け取れるように電気信号に変換されます。電気信号は、その後、聴神経を通り脳に伝わって音として認識されます。

 

音を聞くためには、これらの各部分が正常に機能しなければなりません。

難聴とは

難聴
  • 難聴とは、音が聞こえにくい状態を言います。上記の①~③のいずれの機能や構造に異常が生じることでも難聴となり得ます。
  • 難聴は大人から子どもまであらゆる年代で起こりますが、子どもの場合は自分から聞こえないことを言えないことが多く、難聴があっても気づかれないことがあります。ご家族が子どもの難聴に気づいてあげる必要があります。
  • 子どもの難聴を疑う目安として、大きな音に反応しない、音の方をみない、ことばの出現が遅い、ことばがはっきり言えない、テレビのボリュームが大きい、テレビの真ん前でみるようになる、などがあります。

難聴の原因

子どもの難聴の原因は、さまざまです。大きく分けると、先天性(生まれたときから)の難聴と、後天性(生まれてから)の難聴があります。

 

<先天性難聴>

先天性難聴とは、生まれたときから聞こえが悪いことを言いますが、およそ1,000人に1人の割合です。先天性難聴の半分くらいが遺伝子に関係する難聴と考えられています。その他、胎児期(おなかにいる間)のウイルス感染や内耳奇形などがあります。

  • 遺伝性難聴:遺伝子変異による難聴で、ご両親の聞こえがよい場合でもお子さんが難聴になることがあります。難聴以外の症状(例えば、甲状腺や腎臓の病気など)もある症候性難聴と、難聴以外に症状のない非症候性難聴がありますが、約70%が非症候性難聴とされています。
  • 先天性サイトメガロウイルス感染症:赤ちゃんがお腹にいる時期にサイトメガロウイルスに感染することで生じる難聴です。難聴以外に、低出生体重(生まれた時の体重が軽い)、肝脾腫(肝臓や脾臓が大きくなる)などの症状がでることがあります。
  • 先天性風疹症候群:妊娠初期に風疹に感染した場合、お子さんに難聴、先天性心疾患、白内障などの症状がでてくることがあり、難聴の程度が比較的重いことが多いとされています。

 

<後天性難聴>

後天性難聴とは、生まれたあとから聞こえが悪くなることをいい、髄膜炎やムンプス(おたふくかぜ)、頭部外傷、周産期のハイリスク(低出生体重、胎児仮死、重症黄疸など)、ヘッドフォン難聴などの原因があります。その他、小児に多い難聴の原因に、滲出性中耳炎があります。

  • ムンプス難聴:おたふくかぜのときに難聴がでてくることがあります。通常は片側のみの高度な難聴です。ムンプス難聴は治りにくいことが知られていますので、ワクチン接種による予防が重要になってきます。
  • 滲出性中耳炎:小児の難聴の原因として最も多く、就学前に90%が一度はかかることがあるとされています。風邪などをきっかけに耳管(鼻の奥にある耳とつながっている管)の機能が低下して中耳腔(鼓膜の奥)に貯留液がたまり、難聴となります。難聴の程度は軽度から中等度まで様々です。

聴覚機能スクリーニング検査

聴覚機能スクリーニング検査

当院では、他覚的に聴覚のスクリーニングができるOAE(耳音響放射)スクリーナー検査機を用いて難聴のチェックを行っています。この検査では、代表的な4つの周波数(2, 3, 4, 5 kHz)で検査でき、新生児、乳幼児、幼児、就学前、学童の子どもの難聴のスクリーニングに適しています。

 

・患者さんからの協力は最低限でOK : 自覚的検査には反応できない乳幼児や じっと座っていられない子どもでも迅速にスクリーニングできます。

 

・特許取得の騒音軽減テクノロジー:少々騒がしい環境でも検査の精度を守ります。

 

・簡単な操作性 : 3つのボタンを押すだけで機器本体の電源ON、両耳のテストが完了します(片耳約8秒で検査完了)。

検査のタイミング

子どもの難聴は、言葉の遅れ・学習の遅れの原因になるため、早期発見が非常に大切です。聞く力や話す力をつける練習を早くに始められるほど、ことばを十分に獲得し、スムーズにコミュニケーションできるようになる可能性が高まります。

したがって、新生児の聴覚スクリーニング検査の意義は非常に大きく、欧米では検査の実施を義務づけている国もあります。ただ、日本国内では新生児の聴覚スクリーニングの実施はまだ十分ではなく、出生直後に検査を受けられなかった場合には、その後の健診でなるべく早く検査を受けることが大切です。

 

…とはいうものの、市の健診で検査があるわけではありません。

当院では、上記のOAEスクリーナー検査を健診でも取り入れております。また、急性中耳炎の後や、浸出性中耳炎で治療中の場合にも検査を行います。

 

 

その他、次のような症状がある場合にも検査をお勧めします。気になる場合は、当院へご相談ください。

聞こえない,子ども
  • 子どもが聞こえないと訴える
  • 家族が聞こえていないかもと感じる
  • 耳がつまった感じ、耳鳴りなどの症状を訴える
  • 大きな音に反応しない、音がしている方向をみない
  • 言葉がでてくるのが遅い、言葉がはっきり言えない
  • 呼びかけても気がつかない、聞き返す
  • テレビのボリュームが大きい、テレビの真ん前でみるようになる
  • 部屋の外の音(サイレンの音など)に反応を示さない
  • 新生児聴覚スクリーニングで精査をすすめられた